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【短編】孤独のグルメ『栃木県宇都宮市の高校生一人サイズの焼きそば』

 

 

 

 

 

   孤独のグルメ『栃木県宇都宮市の高校生一人サイズの焼きそば』

 

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1.

 餃子、餃子、餃子、餃子。

 右を向いても左を向いても、「餃子」の二文字が眼に飛び込んで来る。まるで街全体が、餃子以外は食わせないぞとでも言っているようだ。餃子包囲網。JR宇都宮駅を出た俺はその風景に半ば唖然としつつ、この街の全力餃子推しに静かに感動していた。

「さすが、餃子の街」

 思わず独り言が漏れる。不思議な場所に来てしまった。宇都宮は、餃子とジャズと、あと確か、カクテルの街。餃子もジャズも大好物だが、残念ながら下戸の俺にはカクテルは関係無い。しかし餃子とジャズとカクテルなんて、はちゃめちゃというか欲張りというか…。

 コートの襟を直して、駅から続く陸橋を降りる。飲食店で埋め尽くされた大通りを少し進むと餃子包囲網が解け、そして急に風景が開けた。橋だ。片側三車線の道路とその両端に広く取られた歩道を乗せた、眼の前いっぱいの大きな橋。その上に覆い被さるように正午の晴天が拡がり、ほーっと思って橋の中程に立って欄干に凭れてみると、成る程とても気持ちが良い。橋の下を流れる大きな川の、その静かな水音も心地良い。思わず深呼吸してしまう。ついさっきまで餃子の渦の中にいたのに、本当に不思議な街だ。どうやら川はゆったりとしたUの字型を描いて、先ほどの餃子包囲網とは逆、大通りの向こう側へと続いて行ってるようで、この辺りを俯瞰したらまるで離れ小島の突端のように見えるのかもしれない。

 思わず旅情が溢れて来るが、先ずは仕事だ。

 

2.

 木枠のガラス戸を開け、「こんにちは」と店内に声をかけると、こちらが自己紹介をするより先に「あっ、井之頭さんですか」という声が飛んで来た。重厚な造りのカウンターの向こうに、如何にも老舗の喫茶店のマスター然とした初老の男性がにこやかに立っていた。

「はい、お約束頂いた井之頭です」

 コーヒーの良い香りと煙草の匂いが微かに漂っている。店内にはマスターの姿しかないが、つい先ほどまでは客がいたようだ。

「遠い所までわざわざありがとうございます、ささ、こちらへどうぞ」

 促され、奥のテーブル席に座りながらコートを脱いだ。マスターの「井之頭さん、ホットコーヒーで宜しいですか」という言葉に俺は「いえ、おかまいなく」と月並みの返事を返す。

 店内を何気なく見渡してみると、壁にはフランソワ・トリュフォーなどの古いヨーロッパ映画のポスターが飾られ、店内奥の本棚にはぎっしりと映画のパンフレットが詰め込まれている。カウンターにはVHSやDVD。映画好きのための、映画好きによる喫茶店なのだろう。

 暫くして、火にかけられたケトルの蓋が踊る音、挽いた豆に湯が少しずつ注がれる音が静かに聴こえ、そしてソーサーに乗せたコーヒーカップと共にマスターがカウンターから出て来た。俺の眼の前で細い湯気が幾筋か揺れる。

「どうぞ、お召し上がりください」

 カップを置き、どっこいしょ、とマスターが向かいの席に座る。

「ありがとうございます、頂きます」

 カップを口につけ、少し啜ってみる。酸味より甘みが強くコクが深い、俺好みのコーヒーだ。

 発注の依頼は、コーヒーカップではなくティーカップだった。最近はコーヒーを好まない若い客も増えたため、紅茶のメニューを増やそうと考えていたのだと言う。その上で、紅茶を出す時にはそれ専用の、出来ればヨーロッパ製のティーカップで出したいという事だった。輸入雑貨を個人で商っているフットワークの軽い俺がまさに適任だった。

「私が直ぐにご用意出来る商品がこちらになります」

 俺は持参したノートパソコンをマスターの方に向けた。画面上には注文通り、ヨーロッパ製のティーカップの写真がズラッと並んでいる。朝顔型、筒型、無地の物から内側にも模様が入った物。マスターはそれを眺め、これもいいなあこっちもいいと嬉しそうに悩み始めた。俺は「ごゆっくり、お選び下さい」と小さく告げ、席を立って再び店内を眺めた。

 トリュフォーゴダールフェリーニブニュエルタルコフスキー。学生時代に都内の名画座で見た記憶が蘇る。膨大な量のパンフレットの中には、比較的新しいアメリカの映画や邦画の物もあった。常連客が置いて行った物もあるのだろうか。数年前に大阪の新世界の辺りに行った時、街の風景がまるでフェリーニの映画のようだと思ったが、ここ宇都宮はどうだろうか。ラース・フォン・トリアー?はたまた鈴木清順?いや、不思議な街だが決して奇怪ではないだろう。

 程なくしてマスターはイギリス製のティーカップ数個を決め、俺はノートパソコンを閉じながら「では詳しい納期などについてはまたご連絡さし上げます」と伝える。と、マスターが唐突に「井之頭さん、なにか宇都宮らしいものは召し上がりましたか?」と俺に訊いた。こういった質問をくれるのは、大抵が旅人に優しい人だ。

「いえ、こちらに着いてからはまだ。これから何か食べようかと思っていたところで。やっぱり、餃子が美味しいんでしょうか」

「ええ勿論。宇都宮の餃子は絶品ですよ、他のどこの県にも負けません」

 その自信たっぷりの口ぶりに、俺は不意に数年前に新聞で読んだ記事を思い出した。

「そういえば、静岡でしたっけ、あちらも餃子が有名で、ライバル関係にあるとか」

「ああー、浜松餃子ですか?」

 マスターの口元がどことなく皮肉めいた動きを見せる。

「ええ、確か県内の餃子消費量で一度宇都宮に勝ったとか…」

 マスターが「ハハッ」とまるで馬鹿馬鹿しいとでも言いた気な笑い方をし、「でもすぐに奪還しましたよ」と付け加えるように言う。

「そもそもね、井之頭さん、あれは浜松と宇都宮で、調査の仕方が全然違ったんですよ。浜松の方の調査方法は、結果がね、言い方は悪いけど水増し出来てしまうようなものだったんですよ。家計調査というものがありましてね、そもそも餃子というものが、店舗で食べるもの、持ち帰るもの、スーパーで売ってるもの、その中でも冷凍のものと色々あって、何がどう分類されるかという…」

「は、はぁ...」

 まいった。マスターの宇都宮餃子魂に火を付けてしまった。先ほど店内を眺めて、映画の蘊蓄を延々語られる事は少し覚悟していたが、まさか餃子の、しかも消費量の算出法について語られる事になってしまうとは予想だにしていなかった。マスターは微笑みながら、しかし眼の奥には誇りと対抗心が入り交じったような熱気をたたえながら、話すのを止めない。

「また両者の特徴なんですけどね、宇都宮も浜松も、どちらも中国北部の餃子がそのルーツにはなってはいるのですが、例えばウチの方では白菜を、アッチの方ではキャベツを使う事が多くて、いや例外は勿論あるんですがね、それもやはりそれぞれの土地の気候が…」

 どうしよう。もう餃子の話で、お腹が一杯だ。いや、話なんかで腹が膨れる訳が無い。自宅で朝食を取ってからかなりの時間が経っている。

 

 腹が、減った。

 

 「あの、あのすみません、私、次の商談がありまして」

 勿論嘘だ。マスターの餃子話を遮って大変に申し訳ないが、今すぐに何か食べたい。

 「あっそうですか、すみません長々と引き止めてしまいまして」

 「いえ、こちらこそ申し訳有りません。もっとお話をお聴きしたかったのですが…。またすぐに、ご連絡さし上げますので」

 椅子にかけていたコートを取り、マスターに改めて挨拶をしてから俺は慌ただしく店を出た。大通りに出て、コートを着る。

 宇都宮。さあ、何を食う。

 ここから駅の方に戻って餃子を食べるか。いや、あの餃子包囲網を思い出せ。どこもかしこも餃子餃子餃子。どの店で食うか悩んでるうちに日が暮れちまう。かと言って携帯電話で話題の餃子店を探そうなどとは思わない。飯との出逢いも一期一会。確かすぐ傍に大きな商店街があった。一先ずはそこで探そう。きっとその裏道にも食べ物屋が有る筈だ。

 

3.

 巨大なアーケード商店街。凄い。道幅は広く、眼を凝らしても出口がよく見えない。人はまばらだが、左右に色々なお店がひしめき合っている。たこ焼き屋、洋服屋、串焼き屋、カフェ、お洒落なバルみたいなものまである。勿論餃子屋も。焦らなくていい。ここは餃子とジャズとカクテルの不思議な街だ。いっそこのラビリンスに飛び込んで、たっぷりと迷ってみようじゃないか。

 暫くアーケードを進むと、ずっと店舗が軒を連ねていた商店街の左側が急に開けた。午後の陽の光がたっぷりと落ちて来ている。どうやらこの商店街の広場らしい。奥には立派な屋根付きのステージがあって、これから何かイベントが行なわれるのかスピーカーなどの機材が設営されている。俺は何気なくその広場に足を踏み入れてみた。

 観客は未だ少ないようで、見る所若い男性が多く、中にはお揃いの真っ赤なTシャツを着た者もちらほらいる。なんだろう、もしかして飲食関係のイベントだろうか?これから色んな食べ物が出て来たりして。そんな風に推測していると、よりお腹が減って来る。広場には特に屋台なども出ていなかったので、俺は広場を斜めに突っ切る形で商店街から伸びる横道に反れてみた。

 途端、風景が一変した。駐車場。住居。煤けた古いビル、これは映画館らしい。道の奥にはこれまた古く背の低い建物が肩を寄せ合っている。いかん、こっちにはお店は少なそうだ。引き返そう。

 再び商店街の方に向き直り歩き始めた所で、視界の端に何か見慣れない物が映った。先ほど見渡した時は、その建物の二階に洗濯物が干されていたため普通の住居かと思ったが、一階には白い暖簾が下がっている。左右に広いガラス戸の前に下げられたその暖簾には、黒ではなく殆ど灰色といった趣に掠れ切った字で「やきそば」とだけ書いてある。

「やきそば…?」

 それ以外何も書いてない。屋号すらも書いてない。ただ「やきそば」とだけ書いてある。こんな店構えは初めて見た。なんだか映画のセットみたいだ。そういえば以前、色々と地方の名物に詳しい滝山が栃木県は焼きそばも有名だと言っていた気がする。そうか、宇都宮は餃子とジャズとカクテルと焼きそばの街だったのか。

 ガラス越しに店内をそっと覗いてみると、店員らしき男性が巨大な鉄板で十数人分はあろうかという量の焼きそばを炒めている。そして簡素な木製のテーブルとクッション部分がドーナツ型になったパイプ椅子が並ぶ。情報量があまりに少ない。その不思議な空虚に吸い込まれるように、俺は気付いたら暖簾をくぐっていた。

 

4.

「いらっしゃい」

 鉄板の前の男性と、奥から出て来た老齢の女性が落ち着いた声で言う。実際に中に入ってみると、本当に妙な心地だった。食べ物屋というよりまるで地方のバスの待合所みたいだ。静かで、物が少ない。席についてコートを脱いだ俺は先ずテーブルを見渡してみる。ソースと七味が置いてある。七味はまだ解るが、どうしてソースが置いてあるんだろう。だって焼きそばって最初からソース味じゃないか。その横には、プラスチックのケースに入った、メニュー表ならぬ注意書きが置いてあった。手に取って読んでみる。

「ふむ。代金は先払い。ソースは一口食べてからかけるか決めてください…」

 なんだろう、味は付いてないんだろうか。

「具はキャベツのみです…?」

 えー、豚肉も人参も入ってないんだろうか。しかし俺はその次に続く文章にたまげた。

「不要の方は先に言ってください」

 うそーん。それしか入っていない貴重な具材である筈のキャベツが要らない、そんな事があるんだろうか。ストイックに麺だけを楽しむのが宇都宮流なんだろうか…?俺は欲しいぞ、キャベツ。

 メニューはどこだろう。壁を見渡すと、それらしいものがあった。小200円、中250円、大盛300円。成る程、焼きそばしか無いんだ。しかも安い。お祭りの屋台より安いんじゃないか。すっかりお腹ぺこちゃんな俺は直ぐさま大盛りを頼もうと思ったが、先ほど鉄板の上で炒められていた焼きそばの量を思い出した。まさかこの値段からは考えにくいが、化け物みたいな量が出て来たらどうしよう。不運な事に店内には客は俺しか居らず、大体の量を確認する事も出来ない。先達はあらまほしきことなり。

 悩みながらメニュー表を睨み付けていると、値段の下に小さく量の目安が書いてある事に気付いた。良かった、これで安心して注文が出来る。

 大盛りに書かれた目安を見てみると、「高校生一人」と書いてある。高校生。一人。えー。これはどうしたものか。宇都宮の高校生は一人でどれくらい焼きそばを食べるものなのだろう。大人には足りないんだろうか、それとも成長期の高校生は大人より遥かに食べるんだろうか。というかその高校生の体格はどれくらいで食欲は。ええいままよ、飛び込んだ不思議な街だ、俺は今一人の高校生になる!

「すみません、大盛り一つ、ください」

 女性に百円玉を三枚手渡し、軋む椅子に改めてどっしりと腰を据えた。俺は今高校生。ヨーロッパの家具や雑貨に興味を持ち始めた、多感で屈強で食いしん坊な17歳だ。

 そういえば、俺が17歳の頃はどんな日々を過ごしていたっけ。ガラス窓の向こうに映画館の入り口が見える。そういえばフェリーニの『ローマ』を見たのは17歳の頃だったかもしれない。確かあの映画、ローマに移り住んで来た若者が、夜にそこの人達と一緒にスパゲティを食べるシーンがあったな。真っ赤なソースが絡まっててハムとかの具材がたくさん入っててべらぼうに旨そうなんだけど、量が凄いんだ。大皿に山盛りになったスパゲティをそれぞれの皿にこれまた山盛りに取り分けていくんだ。えっもしかして、俺もこれからあんな量の焼きそばを食べる事になるのか?

 安心しろ、ここはローマじゃない、宇都宮だ。大司教もいないしトレヴィの泉も無い。あれ、トレヴィの泉が出て来るのって『甘い生活』だっけ?真夜中に美しい女性と二人で...

「はいお待ちどうさま」

 その声にハッとして眼の前を見ると、皿に盛られた一般的な量の焼きそばが置かれていて、俺は安心する。良かった、宇都宮の高校生が皆大食漢じゃなくて。

 確かに具はザク切りになったキャベツだけのようだ。そして麺が太い。まるで茶色い稲庭うどん。いや、麺が平たくない分こっちの方が太いかもしれない。ソースの香りがほのかに立ち昇って来る。

「いただきます」

 割り箸を取って、パキッと割っていざとばかりに麺の中に突き刺す。持ち上げる。重たい。ソースをかけるのは一口食べてから…と呟きながら恐る恐る啜ってみる。うむ、味はついているが確かにあっさりめだ、好みによってソースをかけたり七味をかけたりして楽しむんだろう。噛むと口の中でモソモソと音がする。麺の太さによるものなのだろうか、あまり水分量が無くて、食いでが凄い。一口一口がどすんと胃に入ってくるのが解る。唯一の具であるキャベツの甘さとシャキシャキとした食感が嬉しい。本当にキャベツ抜きで注文する人がいるんだろうか、いるとしたらちょっと会ってみたい、というか見てみたい。

 高校生になった俺は、まるでキツい部活帰りのような勢いで大盛りの焼きそばを一心に啜る。口一杯に入れてモソモソと噛んでどすんと飲み込む。そのままでも、ソースをかけても、七味をかけても、旨い。放課後に友達同士でファミレスでポテトなんかをつまみながらダベるのも良いかもしれないけど、こんな風にキャベツしか入ってない極太の焼きそばを一緒に食べるのも、絶対に楽しい筈だ。

 気付けばお皿はすっからかん。

「はー、ごちそうさまでした」

 300円でお腹いっぱい。嬉しい。

「すみません、お水頂けますか」

「お水そちらの方でセルフサービスになってますので」

 女性が答える。見ると厨房と席の間にいきなりシンクがあって、どうやらそこの蛇口で自分で水を入れるようだ。うーん、なんとも豪快。思わずガブガブ飲みたくなっちゃうけど、そこまで高校生ぶらなくても良い。一杯だけ飲んでお礼を言って店を出よう。

 

5.

 暖簾をくぐり、駅に向かうために商店街に戻る。広場ではいよいよイベントが始まっているようだった。大音量で音楽が鳴っていて、ステージ上では若い女の子がお揃いの衣装を着て踊っている。踊りながら歌も唄っているようだ。先ほど見た赤いTシャツを着た若者達が盛り上がっている。

「へえ、もしかして、栃木県のアイドルかな」

 そうか、彼らは親衛隊だったんだ。

 立ち止まって聴いていると、歌詞の中に餃子とか苺とか干瓢とか、いろは坂だの日光だの栃木県の色々な名物が盛り込まれていた。えーっと、宇都宮は餃子とジャズとカクテルと焼きそばと…それに苺と干瓢と紅葉と江戸村と…あー、もうお腹いっぱいだ。一体何回栃木県に来ればいいんだ。名物がありすぎる。目眩がしてきそうだ。

 ふと見るとステージの傍に一つだけテントが立てられていて、どうやらそこで彼女達のCDを売っているようだった。せっかくだから一枚、おみやげに買って行こうか。

「すみません、今歌ってた、栃木県の歌が入ってるCDありますか」

 頬がこけた、少し強面の売り子の男性に訊いてみる。

「こちらに入ってます」

「じゃあ、それ一枚ください」

「ありがとうございます、1,000円です」

 帰ったらこの曲を聴いて栃木県の名物について勉強してみよう。少なくとも、あの喫茶店にティーカップを納品する時にもう一度訪れる筈だ。

 千円札を渡し、袋に入れられたCDを強面の売り子から受け取る。

「ではこちら、CDと特典券です」

「えっ特典券」

 なにそれ。

「それ一枚でライブ終了後の握手会にご参加頂けますんで」

 えっ。握手って、あの子達と?誰が?俺が?

「無くさないようお気をつけ下さい」

「は、はい…」

 どうする俺。CDが欲しかっただけなのに。アイドルと握手なんて、あまりに予想外の展開だ。第一俺はあの子達の事を何も知らない。良いんだろうか。誰か親衛隊の人に券をあげてしまおうか…。いや、俺が高校生だったらどうしていた?部活帰りで、具がキャベツだけの焼きそばを腹いっぱい食べて、歯についた青海苔なんかも気にする必要も無くアイドルと握手出来るとしたら…?

 俺は特典券とやらを片手に握りしめたまま、栃木県のアイドルのライブをぼーっと眺めていた。